「筋肉痛が出ないと意味がない」は誤解?筋肉が育つ本当のメカニズム
「筋肉痛にならないと効果がない」は本当?
トレーニング後に「今日は筋肉痛が全然ないんですけど、ちゃんと効いてますか?」と聞かれることがよくあります。多くの方が「筋肉痛=トレーニングの成果」だと考えがちですが、実はこの2つの関係は、皆さんが思っているほど単純ではありません。
筋肉痛は「筋肉が育った証拠」ではない
2011年に学術誌『Journal of Experimental Biology』に掲載された研究では、同じ強度のトレーニングを、トレーニング経験者と未経験者の2グループで11週間続けてもらいました。結果、未経験者グループには強い筋肉痛が出た一方、経験者グループにはほとんど筋肉痛が出ませんでした。しかし、筋肉のサイズと筋力の増加量は、両グループでほぼ同じだったのです。
研究者らは「負荷を徐々に高めていけば、筋肉痛をほとんど伴わずに身体は適応していく」と結論づけています。トレーニング指導者向けの総説(Schoenfeld & Contreras)でも、「筋肉痛の度合いと筋肥大の度合いに強い相関はない」とまとめられています。つまり、筋肉痛が少ないからといって、トレーニングの効果が出ていないわけではないのです。
筋肉が育つために本当に必要な3つの要素
筋肉痛の有無より大事なのは、次の3つです。
1つ目は「負荷を少しずつ上げていくこと」。同じ重さ・同じ回数をずっと続けるのではなく、慣れてきたら少しだけ負荷を増やす。この積み重ねが、筋肉に「もっと強くならなきゃ」というサインを送ります。
2つ目は「十分な休息をとること」。トレーニングで受けた刺激は、休んでいる間に修復されて初めて力に変わります。毎日同じ部位を追い込むより、適切に休む日を作った方が結果的に近道です。
3つ目は「栄養、特にタンパク質をきちんと摂ること」。筋肉の材料そのものが不足していては、いくら良いトレーニングをしても効果は出づらくなります。
タンパク質はどれくらい摂ればいい?
これについては2018年に『British Journal of Sports Medicine』誌に掲載された、49件の研究・1863人分のデータを統合した大規模なメタ分析があります。それによると、レジスタンストレーニング(筋トレ)をしている人が筋肉量を増やす上で、タンパク質の摂取量が体重1kgあたり約1.6gを超えると、それ以上増やしてもメリットが頭打ちになる、という結果が出ています(個人差を考慮した実用的な範囲としては、体重1kgあたり1.6〜2.2g程度)。体重60kgの方なら、1日およそ96〜130g程度が目安になる計算です。
まとめ:筋肉痛を追いかけるのをやめよう
「今日は筋肉痛がなかったから失敗だ」と考える必要はありません。大事なのは、筋肉痛の強さではなく、負荷・休息・栄養を地道に積み重ねること。E.Sでも「頑張って追い込む」よりも、続けやすい強度で確実に積み重ねていくことを大切にしています。ご自身の体と相談しながら、無理なく続けていきましょう。
出典・参考文献
- Morton RW, et al. (2018) "A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults." British Journal of Sports Medicine, 52(6), 376-384.
- Schoenfeld BJ, Contreras B. "Is Postexercise Muscle Soreness a Valid Indicator of Muscle Damage and Muscle Hypertrophy?" Strength and Conditioning Journal.
- 2011年 Journal of Experimental Biology 掲載研究(訓練経験者・未経験者間での筋肉痛と筋肥大の比較試験)
実は自分自身も継続が苦手で、何度も挫折した経験があります。だからこそ「続けることの難しさ」がよくわかります。無理のない習慣化を一緒に目指しましょう。

