「有酸素運動は20分以上やらないと意味がない」は本当?脂肪が燃える仕組みを研究データで確認してみた
「有酸素は20分以上じゃないと意味がない」、聞いたことありませんか?
「ウォーキングは20分以上続けないと脂肪が燃えないんですよね?」会員様からこう聞かれることがよくあります。忙しい日に有酸素運動の時間が10分しか取れないと、「これじゃ意味ないか」とやめてしまう方も少なくありません。たしかに、運動開始からしばらくは糖質がエネルギー源の中心になり、時間が経つにつれて脂肪の利用割合が増えていくのは事実です。ただ、「20分」というキリの良い数字で急にスイッチが切り替わるかというと、研究データを見る限りではそうとも言い切れません。今日は、この「20分」の正体を確認していきます。
運動中のエネルギー源は、糖質と脂肪の"ミックス"
運動中、体は糖質(筋肉や肝臓に蓄えられたグリコーゲン、血液中のブドウ糖)と脂肪(体脂肪や筋肉内の脂肪)の両方をエネルギー源として同時に使っています。どちらか一方だけを使うわけではなく、運動の強度や時間によって、その配分が変化するイメージです。これは1993年に発表された運動生理学の基礎研究(Romijn et al., 1993)でも確認されていて、運動強度が上がるほど糖質の利用割合が増え、脂肪の利用割合は相対的に下がっていくという関係が示されています。同研究では、65%VO2max(息が弾むが会話はできる、ジョギング〜ややきついウォーキング程度の強度)のとき、使われるエネルギーのおよそ半分程度が脂肪由来だったと報告されており、このあたりが最も効率よく脂肪を使える強度帯(Fatmax)に近いとされています。
「20分」で急にスイッチが入るわけではない
では、時間の経過についてはどうでしょうか。2002年に『The Journal of Physiology』誌に掲載された研究(Watt et al., 2002)では、被験者に55%VO2max程度の強度で4時間自転車をこいでもらい、エネルギー源の変化を詳しく調べています。結果は、最初の2時間は糖質が約63%・脂肪が約37%の割合だったのに対し、後半の2時間では脂肪が約58%・糖質が約42%と逆転していた、というものでした。つまり、脂肪利用の割合が増えていくのは本当ですが、それは「20分」という一点で急に切り替わるようなものではなく、数十分〜数時間という、もっと緩やかな時間軸で少しずつ進んでいく変化だということです。教科書にある「20分を超えると脂肪燃焼の割合が高まる」という説明の方向性自体は間違っていないものの、「20分」という具体的な数字の根拠は、主要な研究の中には見当たりませんでした。もともとは糖質がエネルギー源の中心である時間の目安が、いつの間にか「20分未満は意味がない」という誤解に変化して広まってしまったのかもしれません。
本当に大事なのは「運動中にどっちが燃えたか」より「1日の総消費カロリー」
さらに言うと、ダイエットを目的に有酸素運動を行う場合、「運動中に糖質と脂肪のどちらが多く使われたか」よりも、「結果として1日でどれだけのカロリーを消費できたか」の方がずっと重要だというのが、多くの専門家の一致した見解です。体は24時間というスパンで糖質と脂肪のエネルギーバランスを調整しているため、運動中に糖質を多く使っていたとしても、その分は他のタイミングで帳尻が合わせられます。2018年に発表されたレビュー論文(Purdom et al., 2018, Journal of the International Society of Sports Nutrition)でも、最大脂肪酸化(Fatmax)が起こる運動強度には45〜65%VO2max程度という報告が多い一方、年齢や性別、トレーニング経験などによって個人差が大きいことが指摘されています。「何分やったか」「どの強度か」を厳密に追い求めるよりも、トータルでどれだけ体を動かせたかに目を向ける方が、実用的だと言えそうです。
三日坊主さん専門ジムが考える、有酸素運動との付き合い方
E.Sでは、有酸素運動についても「続けられる形」を一番大切にしています。「20分やらないと意味がない」と思い込んでしまうと、10分しか時間が取れない日は「やらない方がマシ」という判断になりがちです。でも、ここまで見てきた通り、脂肪の利用割合は緩やかに変化していくものですし、短い時間の運動でも消費カロリーはゼロではありません。5分のウォーキングでも、エレベーターの代わりに階段を使うことでも、積み重なれば確実にプラスになります。
時間が取れる日は少し長めに、取れない日は5分や10分だけでもOKという気持ちで続ける方が、長い目で見れば「20分フルで週1回」よりも総消費カロリーが大きくなることも珍しくありません。有酸素運動は単調に感じやすく、筋トレ以上に飽きが来やすい種目でもあるので、動画や音楽を聴きながら行う、通勤時に一駅分歩くなど、楽しみながら続けられる工夫を取り入れることもおすすめしています。
まとめ:「20分」の呪縛から離れて、まずは動く時間を積み重ねよう
「有酸素運動は20分以上やらないと意味がない」は、運動時間が長くなるほど脂肪の利用割合が増えていくという本当の現象が、少し極端な形で広まってしまった都市伝説に近いものでした。実際には、脂肪の利用割合は数十分〜数時間という緩やかな時間軸で変化していきますし、ダイエットの観点では運動中の燃料の内訳より、トータルの消費カロリーの方が重要です。今日15分しか時間がなかったとしても、それは決して「無駄な15分」ではありません。「20分」という数字にとらわれず、動ける時に動く。それを積み重ねていくことが、結果的に一番の近道になります。
出典・参考文献
- Romijn JA, Coyle EF, Sidossis LS, et al. (1993) "Regulation of endogenous fat and carbohydrate metabolism in relation to exercise intensity and duration." American Journal of Physiology, 265(3 Pt 1), E380-E391.
- Watt MJ, Heigenhauser GJF, Dyck DJ, Spriet LL (2002) "Intramuscular triacylglycerol, glycogen and acetyl group metabolism during 4 h of moderate exercise in man." The Journal of Physiology, 541(3), 969-978.
- Purdom T, Kravitz L, Dokladny K, Mermier C (2018) "Understanding the factors that affect maximal fat oxidation." Journal of the International Society of Sports Nutrition, 15, 3.
実は自分自身も継続が苦手で、何度も挫折した経験があります。だからこそ「続けることの難しさ」がよくわかります。無理のない習慣化を一緒に目指しましょう。


